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冷徹に至る病②

続き。


このように患者が生命の危険にさらされるというリスクもあるが、担当医の側としても、搬送先の救急医やリエゾン介入した精神科医から「こんな薬を処方するな!」と叱られることになり、心理的ダメージを負ってしまう。つまり精神科医としては薬をたくさん処方して得することなど何一つないのである。そもそもバルビツレートまで使用しないと解消されない不眠というものはほとんどない。仮にあったとしても、解消する必要などないと私は思っている。人は眠れなくても死なないが、睡眠薬を増やしていくと死ぬからである(マイケルジャクソンがいい例である)。

ただし、多剤多量処方をする医者を安易に責められない事情もある。精神科に通院している患者には、①薬が必要なのに処方を拒否する者、②薬は不要なのに処方を要求する者、この2つのタイプが実感として非常に多く、診療時間の大半を両者の説得に費やしている。説得に失敗した場合、①については通院が途絶えるだけだが、②については勝手に他の医療機関に移ってしまう。そこでも処方を断られた場合、患者は行き先がなくなる。しかし、患者のつらい症状というのはなくならないわけなので、行き着く先としてそのような患者を抱え、やむを得ず多剤多量処方を継続している医者が少なくないはずだからである。

さて話を戻そう。では精神科医が患者の話をゆっくり聞くためにはどうすればいいのか。ここで診療報酬の算定方法を改定し、厳密な時間による従量加算方式にしてみよう(私は本当にそうしてほしいと思っている)。すると何人の患者を診ようが、実診療時間に応じて診療報酬が決まる。医者としては働いた分だけ儲かるので、とても公平である。医者は焦って患者を捌かなくてもよくなり、患者も満足いくまで自分の思いを医者に伝えることができる。

仮にこれまで1人5分で済ませていた診療時間が1人30分に延びたとする。もし「通院精神療法30分」の診療報酬が現行のままだと、精神科医の収入は現在の1/6になる。すると誰も精神科医にならず、日本の精神医療が崩壊する。なので精神科医の収入を維持するために、通院精神療法の診療報酬点数を現行の6倍に改定する。また現在精神科に通院中の患者の5/6は予約が取れなくなってしまうので、精神科医療機関を現在の6倍に増やす。このため日本の精神医療にかかる医療費は現在の6倍必要になる。

精神科医も現在の6倍必要になるが、現在の収入レベルのままで精神科医が急に増えるわけはないので、精神科医の収入ひいては精神医療の医療費をさらに増やさないといけない。しかし日本は借金まみれで医療財政は逼迫しており、そんなに医療費を増やせるわけがない。また医療費の患者負担分も6倍になるため、「15分しか診てくれなかったのに、30分分の料金を請求された!」といった、「診た・診なかった」の水掛け論が外来窓口で頻発するだろう。実際に診療時間を多少水増しして請求する医療機関も現れるかもしれない。結論として、現行の診療報酬体系でなければ日本の精神医療が崩壊することがわかった。やはり1人5~10分で診療を終えなければ、日本の精神医療は成立しないのである。

精神科を受診する患者には、純粋に問題の解決方法だけが目的で人間的な接触など求めていないタイプもいるが、たとえ問題は解決されなくても、そのつらい心情をただ聞いてもらうだけで満足というタイプもいる。カウンセリングにはカタルシス効果というものがある。ただ話を聞いてもらうだけで人はすっきりした気持ちになれるのである。それだけで満足してもらえるのなら、時間さえあれば話くらいいくらでも聞くという精神科医が実際には多いと思う。

もちろん私自身もそうである。今日なんて二日酔いがとてもひどかったのだが、患者1人につき15分はじっくりと話を聞くふりをしてトイレに駆け込み嘔吐した。そして医局に戻りたっぷりと昼寝をしたところですっきりとした気持ちになれたので、渾身の思いでこのブログを書き上げた。今はとてもいい気分だ。今夜も気持ちよく酔えそうである。
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SHIMAMOTO Keisuke

Author:SHIMAMOTO Keisuke

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